◆◆ 2003.8月の一句 大 井 恒 行 八 月 は 日 干 し の 兵 の よ く な ら ぶ 筑 紫 磐 井 名は「つくし・ばんせい」という。もちろんすべて筆名である。正体は表さないが、どうも高級官僚らしい。国会開期中は当然ながらまともに帰宅できない時もあるという。 筆名の由来は本人に聞いたことはないが、たぶん筑紫の国、磐井(いわい)の反乱からのものだろう。彼は昨年『定型詩学の原理』という大冊を世に問い、ある総合誌の俳人アンケートでは「無人島に持って行く本5冊」に、多く取り上げられていた。そうでもしないと読み切れないというわけだろう。 現代俳句のなかで、特に、近年の彼の俳句文体は独特で誰にも似ていない。江里昭彦は、『婆伽梵』は磐井の「私説日本史」だと言っているが、掲句は「帝国の章」からのもの。他に「軍神も七月の足臭からめ」「勤労の汗が君らの宝なり」という句もある。 当然ながら日本史は「性愛」と「軍事」に彩られている。なかでも「色恋が雪見障子の向こうがは」「時雨宿娘にかます猿轡」「唇を吸はれてしまふ蛍狩」には時代錯誤と見えながら、実は現代風景でもあることが知れる。 1950年東京生まれ。『婆伽梵』(’92年刊)所載。 |