今 月 の 一 句 ◆  2003.9月 大 井 恒 行 



東 京 空 襲 ア フ ガ ン 廃 墟 ニ ュ ー ヨ ー ク   
                               大 井 恒 行 



 
今月は2年前の9.11。いわゆる自爆による同時多発テロに取材した句をとりあげようと思ったが、適当な句が見つからず、図々しく私の句を挙げることにした。その後事件現場は「グランド・ゼロ」(爆心地)と呼ばれた。グラウンド・ゼロとは、「ヒロシマ・ナガサキ=1945年」「水戸=1999年」「マンハッタン=2001年」へと不気味に符号して行く(椹木野衣)と言う。さらに引き続く帝国・アメリカの理不尽な行動は皆さんがご存じの通りである。
 掲句は、「十二月八日を過ぎず逝きたるよ」「拭えざる涙や嶺を歩く寒」「あお、そら、あお、そら、冬空に翁の眼」など前年末に亡くなられた三橋敏雄追悼の意を込めた句とともに発表したので、俳壇ではほとんど目に留める人もいなかった。
 しかし、仁平勝が「俳句年鑑2003年版」の巻頭提言「バスに乗らないこと」で、「今回同時テロを題材にして、ゆいつ批評性のある句だ。といっても作者は、それを声高に主張しているのではない。アイロニーを表現するのも俳句性のひとつだが、作者はここでちょっと皮肉をいってみせたのである。もっともその皮肉がちゃんと読者に通じ
たかどうか疑問で、そのあたりが俳句の限界なのかもしれない」と評してくれている。
あと一人は、面識もなにも無いのだが、朴鍾大(パク チョンデ)という時調詩人が韓国の文芸誌「シジョワールド」(2003年上半期版)で外国の定型詩「最近の日本の俳句散策」で取り上げ「ニューヨークのテロ事件と東京とかアフガンの爆撃と何が違うのかを諷刺しているのだろうか」との評に巡り合った。
 もっとも、俳句の手法からいえば、三橋敏雄の「当日集合全国戦没者之生霊」に負っているかもしれないと告白しておこう。
     1948年山口県生まれ。「俳句研究」2002年3月号所収。




トップページ/目次/サイトマップ/労働相談ページ