◆ 今 月 の 一 句 ◆ 

                                                          大 井 恒 行 
◆2003年2月分

鬼 と は 私 の こ と か 豆 が ま か れ る     住 宅 顕 信 



 昨年、『住宅顕信読本−若さとはこんな淋しい春なのか』中央公論刊で有名になった
のでご存じの方もあるかもしれないが、〈すみたく・けんしん〉は22歳で出家、結婚
。翌年には急性骨髄性白血病のために入院。離婚し、誕生したばかりの長男を引き取り
、病室で育児。絶望の淵から句作を開始、自由律俳句の「層雲」に入会。その後ついに
病気は快癒する事なく、1987(昭62)年、25歳で夭折した。   
 豆撒きは、節分、つまり旧暦、年越しの夜、立春の前日に行われ、柊を門戸に挿した
りする風習がある。「福は内」「鬼は外」などと声にだして災厄を防ぐよう、厄払いを
し、自分の年齢より一つ多い豆を食べて、歳を増すのである。
 ともあれ、自由律俳人の作品は「うしろすがたのしぐれてゆくか」山頭火、「せきを
してもひとり」放哉など、彼ら自身の境涯と結び付けられることによって、人の心をと
らえてしまう傾向が強い。「ずぶぬれて犬ころ」「水滴のひとつひとつが笑っている顔
だ」「春風の重い扉だ」「洗面器の中のゆがんだ顔をすくいあげる」などをおさめた句
集『未完成』が、顕信死後に出版(’88年)された。1961年生〜87年没。
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