大井恒行の読む12月の一句
ダンボールハウスをつつき寒雀
中村和弘
「寒雀」(かんすずめ)は、季語としては、もう少し寒さの厳しくなる寒中の雀のことである。冬のただ中では、雀の食べるものも少なくなる。もともとは人家の近くでよく見かける雀ではあるが、冬の食糧不足のときは、ことさら人家に近づいてくるのだ。昔は、寒中の雀は美味しいと言われて、焼鳥にして食べたものらしい。
ダンボールハウスは、いわゆる野宿生活者(ホームレス)のためのものであるが、この句ではもちろん雀を食べている光景ではない。公園などで生活している野宿生活者のこぼした食べ物か何か、飛んで来た寒雀がダンボールハウスをつついているのである。
句集『黒船』の「あとがき」には「愚かなる人為への怒り、哀しみもこの句集名に籠めた」とあるので、この掲句にも、野宿生活者の象徴としてのダンボールハウスと寒雀を取り合わせることによって、格差社会がもたらしたものへの作者の怒りと哀しみが籠められているのかも知れない。
「冬ざれや人間喰う板絵あり」「鬼ヒトデ国家のごとく裏返る」「統計的人間となりナイターに」「不発弾の錆の花なる立夏かな」。
昭和17(1942)年静岡県生まれ。『黒船』角川書店(07年9月刊)所収。