◆ 今 月 の 一 句 ◆    2004.9月

                                                          大 井 恒 行 

颱 風 の 目 つ つ い て お り ぬ 予 報 官 

                                                          中 原 道 夫 

 今年は、とりわけ台風の上陸回数が多い。もともと、台風が日本に近づくのは秋にか
けて。昔から二百十日前後が襲来時期なのだが、今年は7月、8月と、しかも、立て続
けに上陸し、風速も、50メートル、60メートルは当たり前、戦後最高風速を各地で
記録している。農作物、建物、河川の被害も大きい。
 掲句は、天気予報図を指し示すときの指示棒で、天気予報士が台風の目をつついてい
ると言うのだ。ほんものの台風の目をつついて遊んでいるような感じにとらわれるから
不思議である。中原道夫の句の特色は、こうした独特の断定にあると言ってよい。余人
の追随を許さない。  
 僕がまだ俳句雑誌「俳句空間」の編集をしていた時だから、もう15年も前になるか
も知れない。送られてきた彼の第一句集『蕩児』を見て、すぐに作品の依頼をした覚え
がある。その以前には、筑紫磐井『野干』の時も、そうした気分があった。同じ能村登
四郎「沖」門下であった。「沖」はこの二人のほかにも、正木ゆう子をはじめ多くの有
望な俳人を創出している。師の選句と指導力の幅の広さがなければ、かくも師と傾向の
違う俊秀は出てこない。明らかに、俳句を作る方法が他とは違うという印象をもった。
その後の、俳壇における彼の超人的とも思える活躍振りは、これまた誰にも引けを取ら
ない。NHK「男の料理」に出演したこともあり、『食いじーぬ』という食べ物エッセ
イもあるぐらいだから、料理にかけても玄人だ。書もよくし、本職の片手間であろうか
、装丁者としてもなかなかだ。「白魚のさかなたること略しけり」「あぶな絵にいやに
ちひさき蛍籠」。
                  1951年新潟県生まれ。『蕩児』所収。



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