◆ 今 月 の 一 句 ◆    2004.12月

                                                                                      大 井 恒 行 

万 国 旗 果 つ る と こ ろ や 冬 の 象 

                                                                                   仁 平   勝 

 万国旗は文字通り世界各国の旗のことだ。子供のころ、運動会などでよく飾られていたように思う。冬の象は動物園にいるのだろうか。僕は、サーカスではないかと想像する。サーカスのテントには万国旗がよく似合う。象使いと人気者の象。サーカスにはどことなく華やかな淋しさがある。ジンタが流れているかも知れない。かつての動物園だってさして事情は変わらない。暑い国で生まれ育った象には冬の季節が苦手なはずだ。
だから「冬の象」は動きも鈍い。木々も枯れていよう。その万国旗の連なりの最後のところに「冬の象」が見えたのだ。
 句集名の「東京物語」からは小津安二郎の映画「東京物語」を思い出す人もあるだろう。掲句は「少年のくに」の章のもの。他に「負け知らずメンコの東千代の介」「初恋は色水を飲む役どころ」、また、「庶民列伝」の章には「片足の皇軍ありし春の辻」と戦後の一風景であった傷痍軍人を彷彿させる句もある。
 仁平勝は評論「発句の変貌」で俳壇では評論家としてデビューし、その後も『俳句が文学になるとき』など、優れた評論集が多いが、趣味を別にすれば俳句もなかなか上手い。往年の名力士の名を読み込んだ一連の作もある。弾丸房錦と呼ばれた「かばい手におくれの髪や房錦」、名横綱の「色男金はなくとも吉葉山」など。
 思えば、彼に最初に会ったのは、彼が俳句を作るようになる以前、お互いの友人だった舞踏家を介してで、その友人の大駱駝艦公演での首吊りパフォーマンス、さらにはアクションとして、何度もそのシーンを観ることになった。
 1949年、東京都武蔵野市生まれ。『東京物語』’93年刊、所収。





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