◆ 今 月 の 一 句 ◆ 2004.10月
お ほ か た は 空 を 使 へ り 神 の 旅
寺 澤 一 雄
季語は「神の旅」。10月は陰暦でいうと神無月。日本全国の神様たち、つまり八百万(やおよろず)の神々が、すべて、出雲大社に集まる月である。従って、出雲地方では、「神有月」(かみありづき)という。従って、季語には「神の留守」「神送り」などもある。なぜ、出雲に集まるかというと、縁結びの談合のためである。出雲大社の縁結び信仰と一体なのだ。旅立ちの時期は10月1日、月末には帰ってくる。出雲の神迎えは10月10日(陰暦)、そして、11日から25日まで、出雲の地に神は滞在する。神さまたちの出発や帰着の日に、未婚男女が御籠りをする風習がある地方もあるらしい。もともとは、春に山から里に降りて来た神が、田に豊饒の作物をもたらし、秋に再び山に帰るという信仰であったものが、中世以後、出雲信仰と結び付いたものらしい。
出雲大社では現在11月11日(陰暦10月)から17日までの間、「神在祭」が行われている。
神を擬人化して「神の旅」と言っているのだが、掲句の眼目は上五・中七の「おほかたは空を使へり」だろう、と思う。つまり、「神の旅」が季語であるということを知らなくても、神だったら、たぶん、多くは、空を飛びながら旅をしているに違いないというふうに読者に思わせるからだ。富安風生には「神立ちて神はおはさぬ神馬かな」という皮肉めいた句もある。
この月、出雲は神々で溢れているので何の問題もないが、神々の居なくなった所では、一体誰が、その「神の留守」を守ったのであろうか。いわゆる留守神となったのは道祖神であったり、竈の神であったり、恵比須様だったらしい。
昭和32(1957)年長野県生まれ。’99年9月の葉書より。
大井恒行