◆ 今 月 の 一 句 ◆ 2005.5月
大 井 恒 行
靴 失 く し 帰 り し は 昔 メ ー デ ー 来
渡 部 マ サ
メーデーの句には時代が反映されている。例えば、昭和三十年頃には「メーデー今宵病者らはほそく歌い和し」赤城さかえ、「主婦たたら踏むメーデーやヒロシマに」沢木欣一、「ガスタンクが夜の目標メーデー来る」金子兜太など、メーデーという言葉にある種の緊張感や高揚感が託されている感じである。
掲句では、そうした激しかったメーデーに参加した頃のことを思い出して句にしているのだ。昔、若い頃にメーデーに参加したことがあったが、そのときは履いていた靴を失くしてしまい、裸足になってしまった。それぐらい激しいデモをしたことがあった、今年もメーデーは来たがそんなこともない、平和だ。作者は元教師であるが、句集の編集はご子息の渡部伸一郎。句集「あとがき」には夫の一周忌を控えてと記してある。たぶん、句集を編むことを通して、夫を亡くし失意の日々の母に少しでも元気になってもらいたい・・・とのご子息の計らいであろう。作者は「鰯雲人に告ぐべきことならず」加藤楸邨に師事し、現在は同門の小檜山繁子主宰「槌」に所属している。句歴三十年は伊達ではない、句集『そぞろごと』には多くの佳句がある。「ふと浮かぶ漱石の『盆槍』十二月」「ジョンレノンの死をいひ開戦の日といはぬ」「我が生まれし十二月八日如何せん」「冬夕焼道に日々見て日々違ふ」「いささかの日の伸びをいひ別れけり」。
1917(大正)年福島県生まれ。『そぞろごと』(’04年刊)所収。
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